(OB近況)田坪宏文1984年卒〜英語教育と共に37年

令和3年3月31日をもって37年間の教員生活を無事終えることができました。

4月1日からは、堺市教育委員会総務課で週4日の再任用短時間勤務者として、障害者雇用事業に関わらせていただいています。

41年前、中学校の英語教師になりたいと関西外大に入学した私は、英語の教師であるなら英語が話せないといけないだろうという理由でESSに入部しました。

当時のESSは、短大と学部を合わせて約170名の部員数を誇る巨大クラブでした。

私にとってESSの活動は新鮮ではありましたが、ジェネミ、グレミ、セクション活動と、講義以外の時間はすべてESSの活動で埋まる毎日でした。教員を目指していた私は、今のままでは教員採用試験の勉強ができない、こんな毎日を過ごすために関西外大に入学したのではないとESSの活動に不満を持っていました。

1回生の頃、こんな悩みを抱えていた私はジェネミの先輩や友人にESSを続けるかやめるか迷っているとよく相談したものです。そんな思いを持ちながらも、2回生になる頃には活動も楽しくなりESSをやめたいという気持ちはなくなっていました。

ESSでは活動の中心となるセクション活動をはじめ、スピーチコンテストや他の大学とのジョイントディスカッションに参加、そして1度だけではありますが、ディベートコンテストにも参加しました。また長期の休みには、日本語厳禁の夏合宿、春合宿に参加しました。

これらの経験はESSに入部したからこそできた貴重な経験でした。また、3回生でヒストリーセクションのリーダーをさせていただいたことや、ESSという大きなクラブで3年間部活動をやり遂げた経験は大きな自信となり、社会人になった私を支えてくれました。

ESSで鍛えられたおかげで、中学校の英語の教師になってからは、堺市で毎年開催される英語暗唱大会に参加する生徒のスピーチ指導を自信を持って行うことできました。

また小・中学校に配置されているNS教員(ネイティブスピーカー)と一緒に英語の授業を行う際も臆することなく生徒の前で英語で会話したり、デモンストレーション見せることができました。ESSでの3年間は、教師になった私の大きなバックボーンであったと思います。

さて、昭和59年4月1日、堺市立泉ヶ丘東中学校で私の教員生活はスタートしました。中学校で30年、小学校で7年の計37年間、学校現場でお世話になり、特に最後の5年間は小学校の校長として公教育に携わらせていただきました。

教師になった頃、周りの人からよく聞いた言葉は「教師っていいなあ、休みが多くて」でした。それがいつの頃からか「今の先生は保護者がうるさいからたいへんやなあ。自分が子どもの頃は、学校で先生に叱られても、親に言うたら余計に怒られるから言えへんかったわ」に変わりました。

そしてここ5年ほどの間に、学校現場では様々な変化がありました。小学校ではそれまでは教科外活動に位置づけられていた道徳が、平成30年度より特別の教科になりました。また2019年までは5・6年生で行っていた外国語活動が、昨年4月から外国語という教科になり、3・4年生では外国語活動が始まりました。同じく昨年よりプログラミング教育が必修化されました。

これらの新しい取組みはもちろん意味のあるものだと思うのですが、導入にあたり学校現場に道徳やプログラミング専門の教師が配置されるわけではありません。外国語においても、ごく一部の学校を除き、ほとんどの小学校では、外国語の免許を持たない、もちろん外国語指導の経験がない担任が外国語を教えています。このような現状を見るにつれ、英語教師である私は「英語をなめるな」と憤りを感じています。

学習指導要領の一部改定に伴い、道徳、外国語、プログラミングが必修化となりましたが新たな人の配置はありません。結局、ただでさえ教える教科が多い小学校教師の負担が増えているのが現状です。

このような現実を見るに連れ、私は教育を語らない政治家に、そして教育にお金をかけようとしないこの国に常日頃から苛立ちを感じています。最近、教師の仕事はブラックだと言われています。そして残念ながらそのような世間の見方に対して反論できない自分がいます。学校現場に対してこんなイメージがあるようでは、良い人材は集まりません。当たり前のことですが、教員の質の低下は学校教育の質の低下につながります。

最近問題となっているわいせつ教員や、暴力教員などは問題外として、ほとんどの教員は毎日、どんなに忙しくてもより良い授業作りに努力を惜しまず、子どもと向き合い、保護者とのつながりを大切にしながら学校を支えています。

マスコミや弁護士が一部の事象だけを取り上げ学校や教師を批判したり、保護者が教師や学校に対して過度な苦情・文句を言うことで教師を動かそうとするケースがあります。手かせ足かせをはめられ、保護者からのクレームを恐れていて、教師が子どもに対して良い教育ができるのか疑問です。

様々なストレスから病休に入る教員が増えています。退職を選ぶ教員もいます。教育委員会がいくらがんばっても、年度途中では代替講師を確保することはほとんど不可能、そして学校の負担がさらに増し教師は疲弊していきます。

言うまでもないことですが、毎日直接子どもに関わるのは教師です。その教師が元気でなければ良い教育などできるはずもありません。教師を追い込んだそのつけは、結局子どもに回ってくるのです。

最近の朗報としては、学校現場の長年の念願であった小学校の「35人学級」がようやく今年度から5年間をかけて実現することになりました。また8月に5日間ほどの閉庁日を作ったり、勤務時間外の電話は基本的には取らないようにするなど、学校現場の働き方改革も少しずつではありますが進んでいます。

日本社会全体に先生を、そして学校を支えよう、応援しようという雰囲気が広がっていくなら、教育界に優秀な人材が集まるはずです。教師はやりがいを感じ、子どもたちのためにさらにがんばるでしょう。

そんな社会になることを願っています。