(OB近況)岸田茂さん 1978年卒

岸田茂です。1978年卒業。65歳。セクションは政経に所属。

昨年(2019年)3月に、41年間勤めた大韓航空を退職し、現在は公益財団法人愛知県労働協会で、若年求職者を支援するコーディネーターとして、会社職場見学会の企画運営を担当しております。

前職にて長年マーケティング企画を担当していたためか、久しぶりの企画運営に携わることは、忘れかけていたワクワク感を思い出すことができ嬉しい限りです。

 

在日韓国人二世として生まれ、大学入学後に初めて本名を使い始めた私は、人と接する毎に日本しか知らない外国人として見られる自分と向き合い始めました。ESSで初めて「IDENTITY」という言葉を耳にして、「自分とはなんぞや」を真剣に考え始め、クラブの仲間とこの言葉についてよく語り合いました。2回生になる前のESS春季合宿で出場したスピーチコンテストでは、この「IDENTITY」をテーマにしました。

当時審査員をされたチェレギノ教授からスピーチ内容に対する称賛のコメントを頂いたことを鮮明に覚えています。それ以来今でも「IDENTITY」という言葉を大切にしています。政経セクションでは、研究テーマに「OIL CRISIS」、「南北問題」などの時事問題を取り上げ、英語で議論し合いました。内容的にはかなり難しかったのですが、仲間と共に意見をぶつけ合いながら学んだ知識は実社会でも大いに役立ちました。「LOGICAL THINKING」を養う絶好の機会を与えてくれたESS、そしてその仲間に感謝しております。
さて1978年、念願の大韓航空に入社できました。飛行機大好き人間で航空会社を第一志望にしていただけに、就職が決まったときの喜びは一入でありました。幸運にもこの会社一筋でお世話になることができました。多岐にわたる業務を経験させて頂き、また色んな飛行機を楽しませて頂くことができ、大変楽しい会社人生であったと思います。
在籍中一際思い出深いのは、1999年から東京日本地域本部で勤務した8年間です。私は会社の新事業分野開発を任され、Cyber Marketing、宣伝・広報を兼任しました。インターネット黎明期においてWEBサービス開発を数多く手掛け、オンライン販売の幕開けとなりました。

その中でも、インターネットに接続した携帯電話サービスは、日本地区限定で始まり、全路線のスケジュール、空席及び運航情報などがリアルタイムにチェックできる、その当時としては世界最先端と評価され、現在のスマホサービスに引き継がれています。また仁川空港の乗り継ぎ促進のために制作したパンフレットは、仁川空港公団より高い評価を頂くことができました。女性層の訪韓誘致促進のため、韓国観光公社と共同で手掛けた冬ソナなどの「韓流ツアー」企画は空前のブームとなり、韓国が初めて日本人海外旅行人気ランキング一位になったのは周知のとおりです。

新事業の開発に当たり、「産みの苦しみ」は、多々有りましたが、このような成果につながったのも、日本や海外スタッフの皆様から頂いたご支援・ご協力の賜物と感謝しております。また個人的には、入社後独学で身につけたハングルによるコミュニケーション力が奏効したものと思っています。
  
グルーバル時代において、語学力を高めることは大変重要ではありますが、それはあくまでも目的を達成するためのひとつの手段ではないかと思います。近未来的には恐らくAIを活用したコミュニケーション方式に変わっていくでしょう。しかしながらそれを司れるのは、人間です。その人間力の育成、考える力の素養がより重要視されるのは間違いありません。

私が強く感銘を受けた考え方は、JALを再建した稲盛和夫さんが提唱している「人生の方程式」というものです。

人生、仕事の結果 = 考え方 x 熱意 x 能力(乗算方式)
人生を成功させるためには、このうち「考え方」という要素が特に重要です。これにはマイナス思考、プラス思考があります。心の座標軸にどのような考え方を据えるのかによって、人生は一変します。

現役学生の皆さんには、これからさらに充実した人生を送るためにも、この考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。そうすれば皆さんを取り巻く周りの景色さえも変わって見えることでしょう。

最後に、新型コロナウイルスの影響により、世界経済が大変な状況に直面しています。
航空・旅行・ホテルなどの観光業界も然りです。
これらの業界を志望していらっしゃる多くの現役学生の皆さんのためにも、この状況が一刻も早く収束し、コロナ前の状態に復興できることを祈願しております。